特定調停
特定調停とは
特定調停は,特定調停法(平成12年2月施行)に基づく調停制度です。
簡易裁判所において,調停委員会が間に入り,債務者と債権者の話し合いによる債務整理を図ります。
このように
・簡易裁判所が関与する
・当事者間の話し合いによる
という点に特徴があります。
特定調停を利用できるのは「特定債務者」です。
特定債務者とは,金銭債務を負っている者であって,①支払不能に陥るおそれのあるもの,②事業の継続に支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することが困難であるもの,③債務超過に陥るおそれのある法人をいいます。
特定調停の流れ
【1 簡易裁判所への申立て】
特定調停申立書,財産の状況を示すべき明細書その他特定債務者であることを明らかにする資料及び関係権利者一覧表などの書類を作成し,申立手数料(収入印紙)及び手続費用(予納郵便切手)と併せて,裁判所に提出します。
申立先の裁判所は,調停の相手方,つまり貸金業者の営業所の所在地を管轄する簡易裁判所になります。
なお,複数の相手方に対し申立てをする場合には,一つの簡易裁判所にすべての相手方の住所等がないときでも,いずれかの相手方の住所等の区域を受け持つ簡易裁判所において,すべての事件を関連事件として取り扱うことがあります。
【2 第1回調停期日】
申立後,約1ヶ月後に,裁判所から呼出状が届きます。
第1回調停期日は,申立人との調停委員との面接となります。相手方の貸金業者は来ません。
調停委員から,申立人の収入状況や負債状況の確認,これからの返済予定などについて質問されます。
【3 第2回以降の調停期日】
第2回以降の調停期日では,1回目の期日での調停委員との面接内容を基に,債権者との話し合いを行います。この話し合いで双方の意見がまとまれば調停成立となり,返済計画に基づいて返済が始まります。
債権者が裁判所に出頭しない場合には,民事調停法17条による決定がなされることもあります。
【4 返済開始】
調停が成立した場合や民事調停法17条による決定に対して異議が出なかった場合には,返済計画に基づいて返済を始めることになります。
特定調停のメリット・デメリット
【特定調停のメリット】
<申立てが容易で費用が安くすみます。>
簡易裁判所には申立書などの書式が備えられており,弁護士等に依頼しなくても必要書類を準備できます。そのため,費用は安く済みます。
<執行手続停止の制度があります。>
特定調停法では,「特定調停の円滑な進行を妨げるおそれがあるとき」に民事執行の停止を求めることができ,制度上は裁判所の裁量で債務者に担保を立てさせないこともできます。
また,「裁判及び調書その他裁判所において作成する書面の記載に基づく民事執行の手続」を含めた民事執行手続全般につき停止を求めることができます。
<一部の債権者のみ相手方とすることができます。>
<自己破産や個人再生のように官報に載ることはありません。>
【特定調停のデメリット】
<ブラックリストに載るため,数年間新たな借金やクレジットカードを作ることができません。>
3ヶ月以上借金の返済が滞っている場合には,その時点で既にブラックリストへ登録されている可能性があります。
<借金の総額が多い人は利用が難しいといえます。>
特定調停の場合,利息制限法による引き直し計算を行った債務を,概ね3年~5年で完済する返済計画を立てることになり,破産や個人再生のような大幅な債権カットは期待できません。そのため,そもそも返済計画が立てられない場合には,特定調停による解決に向いていないといえます。
<手続内で過払金の解決ができません。>
過払金の発生が見込まれる場合,特定調停では「相互に債権債務なし」を内容とする債務不存在調停が上限となります。そのため,過払金の返還を請求するためには別途手続が必要になります。