法人破産について
法人破産について
<法人破産とは>
法人破産とは,債務の返済ができなくなった会社が,裁判所を通じて「法的」な「清算」を行う手続きです。
「法的手続き」ですので,全ての債権者が手続に参加することが要求され,原則として平等な配当に服することになります。また,「精算手続き」ですので,破産手続きが終了した場合,会社(法人格)は消滅することになります。
具体的には
(1) 裁判所への破産手続開始決定の申立て
(2) 破産手続開始決定
(3) 破産管財人が選任(会社財産の管理処分権は破産管財人に専属します)
(4) 破産管財人による会社財産の換価(現金化)
(5) 破産管財人による税金や賃金等の優先的債務を返済
(6) 余剰があれば,一般債権者に配当
といった手続きとなります。
破産できるのはどんなときか
会社が破産をすることができるのは,以下の2点の場合です。
① 支払不能と認められた場合
② 債務超過と認められた場合
支払不能とは
「支払不能」とは,会社が持っている財産,信用,あるいは労務による収入のいずれをとっても,弁済期の到来した債務を一般的かつ継続的に弁済することができない客観的状態です。
つまり,会社の負っている債務について,会社の資力では弁済できないよう状態が長期間続くような客観的状態になれば「支払不能」と判断されることとなります。この反面,一時的な資金不足や主観的に支払いができないと考えているだけでは「支払不能」ではありません。
なお,「手形が不渡りとなった」,「債権者に対して弁済不能であることを通知した」などの状況となったときは「支払停止」として,「支払不能」であると推定されます。
債務超過とは
「債務超過」とは,会社が所有する全ての財産を処分しても,債務を完済することができない状態です。例えば,会社が銀行から3億円の借入れをしている際に,その時の会社の所有する財産(現金,預金,建物,土地,設備など)を全て合わせて2億円の価値しかない場合は,全て現金化しても完済はできませんので「債務超過」であると判断されることになります。
法人破産をお考えの経営者の方へ
会社の経営に行き詰まった場合,選べる選択肢は破産だけではありません。場合によっては,任意整理や民事再生などで会社の経営を続けることができる可能性があります。ただし,どの手続きを選択することができるかは,その時々の状況によって変化するため,画一的な基準があるわけではありません。
やむを得ず,破産しか選択肢がない場合でも,債権者や裁判所とのやり取りを行う際には,法律の専門知識が必ず必要となりますので,弁護士へ相談・依頼されることをお勧めします。
何か少しでも不安なことがありましたら,当事務所までご相談されることをお勧めします。
<法人破産の流れ>
法人破産は,個人とは異なり利害関係人も多いのが通常であり,異なる点も多くあります。ここでは,典型的な法人破産の流れについて説明します。
<代表者の責任>
「法人(会社)」と個人である「代表者(社長)」は,法律上全くの別物です。したがって,法人の借入や取引について,代表者が当然には法的責任を負うことはありません。
もっとも,法人が金融機関から借入を行う際には,代表者が連帯保証していることが通常です。また,借入ではなくとも,各種取引において,代表者が債務(債務不履行の損害賠償債務など)を連帯保証していることも多いのが実情です。このような場合,法人が破産することによって,連帯保証した代表者が多額の債務の支払を求められることになります。
そこで,法人の代表者も,法人と同時に破産を検討しなければなりません。
代表者の自己破産
しかし,破産となれば,一定の財産以外はすべて換価され,債権者に配当されることになります。また,法人破産に伴い,法人から支払われていた報酬はなくなりますので,新たな生活の糧を見つけなければなりません。
そこで,換価の対象とならない自由財産を最大限活用しつつ,生活再建のスケジュールをあらかじめ決めておくことが重要です。
具体例
法人破産を検討しているということで,不動産会社を経営する代表者の方から相談を受けました。調査の結果,代表者の方は,金融機関からの借入の連帯保証をしており,やむを得ず,法人と併せて代表者の方も自己破産することになりました。
代表者の方は,持ち家や自動車などを所有していたことに加え,妻子がおり,今後の生活に非常に不安を抱えておられました。
そこで,破産前に転居及び自動車の売却を行い,原則として換価の対象とならない自由財産として数十万円の生活費(現金)を確保しました。
そして,確保した生活費を使いながら当面の生活を行い,破産手続開始決定の数ヶ月後には,知人の経営する会社の従業員として雇用されました(破産手続開始決定後の収入は「新得財産」として,換価の対象にはなりません。)。その後,無事に法人と代表者の破産手続は終了しました。
代表者の方は,資金繰りに悩まされていた日々から解放され,新たな人生の再スタートができたとして大変喜ばれていました。
当事務所では,多数の経験から,法人代表者の方々の生活再建についても,積極的にお手伝いすることが可能です。ご不明な点があれば,当事務所までぜひご相談ください。
<法人破産と従業員>
法人が破産する場合,従業員は原則として解雇することになります。
法人破産は長年会社のために勤務されてきた従業員の方々に,多大な影響を与えることですので,慎重に対応すべきことです。
解雇に伴い,未払給料や退職金は支払わなければなりませんし,即時解雇の場合は労働基準法所定の解雇予告手当を支払う必要があります。
仮に,上記給料等を支払えない(一部しか支払えない)といった場合は,従業員の方々も法人に対する債権者(労働債権者)となります。
なお,一定の労働債権は,破産手続の中で優先して弁済される部分がありますし,未払賃金については労働者健康福祉機構からの仮払いを受けられる場合があります。
したがって,給料等の全部を支払えない場合には,どの部分から支払うべきかといった問題も生じますので,詳しくは弁護士までご相談ください。
また,解雇にともなう離職票の発行や健康保険・労働保険の処理等,適切な対応が必要ですので,専門家の関与が必須となります。
当事務所では,社会保険労務士など各種専門家との連携により,迅速かつ適切な法人破産をお手伝いします。
<法人の破産を弁護士に依頼するメリット>
「破産の手続きを弁護士に依頼するメリットって何があるの?」
法人の破産に限らず,法的手続に関しては法律の専門家である弁護士に相談することをお勧めします。しかし,法人の破産に関しては,弁護士にしか解決できない問題や弁護士に依頼することで大きなメリットがあることが多数あります。
弁護士に依頼するメリット①
・複雑な手続きを任せられる
法人の破産は,債権者数も多く,権利関係も複雑であることが通常です。個人破産であれば,司法書士の方が書類作成のみ行うことも見受けられますが,法人の破産となると,やはり弁護士が適任です。
弁護士に依頼するメリット②
・債権者への対応
倒産情報が外部に知られると同時に,金融機関などの債権者や取引先などから,問合せが殺到することが多くあります。場合によっては,取り付け騒ぎとなり,財産が散逸してしまうといった事態も予想されます。
そこで,弁護士が介入し,受任通知を送付することで混乱を予防するとともに,債権者からの問合せについては弁護士が適切に対応します。
弁護士に依頼するメリット③
・法人破産は,裁判所の破産手続開始決定が出るまでが山場と言って過言ではありません。
破産手続開始決定後は,裁判所の監督の下,裁判所から選任された破産管財人が換価や配当といった手続きを行なわれますので,代表者の方が積極的に関与していく場面は少ないのが実情です。
しかし,法人の代表者は引き続き,必要に応じて管財人への事情説明を行わなければなりませんし,場合によっては破産管財人から法的責任を追及されることも十分あります。
そこで,弁護士に依頼することで,将来法的問題が生じることを予防するとともに,問題が起きた際は,破産管財人との交渉を行います。
なお,当事務所では,破産管財業務の経験も多数あることから,将来的な破産手続を見据えたうえでの適切な処理を行うことができます。法人の破産を検討する場合は,ぜひ当事務所までご相談ください。
<法人破産とお金>
「法人破産にいくら必要か」という質問を多く受けます。結論からいうと、
1 申立費用
2 予納金
3 弁護士費用
4 その他
が必要となりますので,以下説明します。
1 申立費用
裁判所に納める「収入印紙」「予納郵券」など,通常3万円もあれば十分です。
2 予納金
予納金は,破産管財人の報酬や破産手続き(換価等)の原資となるもので,予納金を納めないと破産手続開始決定が出ないという事態になってしまいます。
東京地方裁判所が公表している予納金基準は以下のとおりです。
山口地方裁判所の場合、法人破産の予納金は100万円以上となることが多いです。
負債総額が ~5000万円 70万円
~1億円 100万円
~5億円 200万円
~10億円 300万円
但し,負債総額,法人の業種や規模,破産手続において予想される業務等から裁判所が決めることになっています。
例えば,会社の工場に産業廃棄物が放置されているような場合など,破産手続において多額の費用が必要と予想される場合には高額の予納金が求められる場合もあります。
その一方で,工場内に残された在庫について,資産価値があり,確実な売却できる状況であったので基準より低い予納金が認められた例もあります。
3 弁護士費用
弁護士費用は会社の業種や規模,財産整理の手数に応じて決めさせていただきます。上記予納金と同額が一応の目安となります。
4 その他
また,授業員の給料等の支払を行うといった場合には,別途確保が必要です。
<費用の捻出>
上記費用について,会社に残っている現金や預金から確保できればベストです。しかし,破産を検討する状態であれば,通常すべて確保することは困難です。
そこで,回収・換価可能な会社財産(売掛金やすぐに現金化できる資産)から上記費用を捻出できるかということがポイントとなります。
例えば,相談を受けた際の資金状態(預金や現金)からすると,上記費用は到底捻出できない財務状況でしたが,経理担当者と協議をした結果,1か月後に売掛金や還付金等の入金があることが判明したため,上記入金を確保し,何とか破産に必要な費用を捻出できたという事案があります。
法人破産の場合,余った財産は,全て破産管財人が換価し,債権者に配当されることになります。したがって,個人破産とは異なり,法人に残しておく財産というものはありません。ただし,ご相談されたとき,すでに法人の財産を使い切ってしまっているという場合がありますが,残念ながらそのような場合には,破産すらできない状況(休眠会社にしたまま放っておくしかない状況)になり得ます。
法人破産において,弁護士への相談が早すぎたということはありません。ぜひ,当事務所までご相談ください。