ソーシャルワーク実践における倫理的ジレンマについて

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ソーシャルワーク実践における「倫理的ジレンマ」とは,相反する複数の倫理的根拠が存在し,どれも重要だと考えられる場合,ソーシャルワーカーがどうすればよいか葛藤することです。

 

倫理的ジレンマには様々なものがありますが,その1つに,

クライエントの自己決定と権利擁護のジレンマがあります。クライエントの自己決定は尊重されるべき重要な価値ですが,クライエントの自己決定が自傷他害の危険を招く場合,そこにジレンマが生じます。

 

設例で考えてみます。高齢者の女性Aが,同居する長男Bから身体的虐待を受けて健康を害している状況で,ケアマネCが虐待の事実を発見してD市に通報しました。その結果,D市包括支援センター職員がAに施設への一時入所と病院での治療を勧めましたが,A自身がBとの同居を希望して施設入所を断っている場合,自己決定と要保護性のジレンマが生じます。

 

倫理的ジレンマに正解は存在しませんが,専門職として最も倫理的だと考えられる判断を下すためには,一定の判断過程に沿って,あらゆる社会資源を活用し,多様な視点から検討を行う必要があります。

 

具体的には,①倫理的課題を把握する,②倫理的判断で影響を受ける個人,集団,組織を把握する,③すべての選択肢を考え,関連する全ての対象に対するプラスとマイナスの影響を考える,④各選択肢に対する賛成と反対の理由を検討する,⑤同僚や専門家のコンサルテーションを得る,⑥判断を行い,その過程を記録に残す,⑦倫理的判断を実践,モニタリング,評価し,記録に残す,というプロセスで検討します。

 

設例では,①Aの保護を考えればBと分離するべきですが,その場合Bとの同居を続けたいというAの自己決定との間に倫理的ジレンマが生じます。また,②影響を受ける範囲は,A・B親子,ケアマネのC,別居しているAの親族,D市,病院,一時入所先の施設,警察に及ぶと考えられます。

 

③選択肢としては,AとBを分離させるか否かで分かれます。分離させない場合,Aの自己決定を尊重することになり,Bに対する影響も少ないですが,虐待行為が続けばAの生命身体に危険が生じます。他方,分離させた場合,Aの安全は確保される一方で,Aの自己決定に反することになり,またBが分離に抵抗する可能性もあります。④倫理原則選別リストによれば,分離させる選択肢は,虐待の程度にもよるが,生命の保護の原則(原則1)及び危害最小の原則(原則4)の観点から賛成できます。他方,自己決定と自由の原則(原則3)の観点からは反対となります。

 

⑤D市はケース会議を開き,主治医や弁護士の意見も聞きながら分離の必要性を検討することになります。そして,Aの判断能力,負傷の程度,虐待の原因(Bのケアの必要性)等について検討し,⑥その検討過程を記録に残します。⑦例えば,Aの判断能力と体力が著しく低下しているため措置で一時的に施設入所させた場合でも,継続的にモニタリングと評価を行い,記録に残します。

 

以上のようなプロセスを経て検討することになります。



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