朝日訴訟と堀木訴訟の意義について

IMG_1354.jpg   朝日訴訟(最大判昭和42年5月24日民集21巻5号1043頁)は,1956年当時の生活扶助費月額600円が「健康で文化的な最低限度の生活水準」を維持するに足りるかどうかが争われた事件です。
一審判決は,原告(朝日茂)の主張を容れ,「健康で文化的な生活水準」の具体的内容は固定的ではないものの,理論的には特定の国における特定の時点において一応客観的に決定しうるから,厚生大臣の生活保護基準の設定行為は裁判的統制に服する「羈束行為」としました。その上で,生活水準を維持する程度の保護に欠ける場合は,生活保護法3条・8条2項に違反すると同時に,実質的には憲法25条にも反すると判示しました。

 

上告中に朝日氏が死亡したため養子夫妻が訴訟の承継を主張しましたが,最高裁は,生活保護受給権は一身専属的な権利であるから死亡により訴訟は終了したと判示しました。ただし,「なお,念のため」として,①憲法第25条1項は,すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営みうるように国政を運営すべきことを国の責務として宣言したにとどまり,直接ここの国民に具体的権利を賦与したものではない(プログラム規定),②何が「健康で文化的な最低限度の生活」であるかの判断は厚生大臣の裁量に委されている,との意見を付加しました。

 

朝日訴訟によって,日本の社会保障・社会福祉の問題,とりわけ貧困問題に対する国民の関心が高まり,「人間らしく生きる」ことの意味,「人間の尊厳とは何か」が問われました。そして,この朝日訴訟をきっかけに,1961年以降,大幅な保護基準の引き上げが毎年行われ,当時の極端な保護行政の引き締めに歯止めがかけられました。そうした意味から,朝日訴訟は,日本の社会福祉の歩みのなかで意義深い訴訟であったといえます。

 

堀木訴訟(最大判昭和57.7.7民集36巻7号1235頁)も,「健康で文化的な最低限度の生活」の具立的内容は,「時々における文化の発達の程度,経済的・社会的条件,一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきもの」であり,それを立法に具体化する場合は,「国の財政状況を無視することができず,また,多方面にわたる複雑多様な,しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とする。」と述べ,「具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は,立法府の広い裁量にゆだねられて」いると判示しました。

 

しかし,堀木訴訟の訴訟期間中に児童扶養手当法が改正され,児童扶養手当と障害福祉年金や老齢福祉年金との併給が認められました。また,この訴訟とともに発展した「堀木さんを守る会」の活動により,障害者や障害者の子どもの権利に対して世論を注目させる契機となりました。
今日,生存権の法的性格については,国民の生存を確保すべき政治的・道義的義務を国に課したにとどまる(プログラム規定)のではなく,それを具体化する法律によって具体的権利となり(抽象的権利),また裁判規範となるという点で,学説・判例がほぼ一致しているといえるでしょう。


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